解雇トラブルを未然に防ぐ ——能力不足を理由とする解雇の実務対応
■ ご相談事例(匿名化)
従業員30名規模のIT企業A社様より、「営業職として中途採用した社員が、入社半年経っても期待した成果を上げない。試用期間も終了したが、解雇したい」とのご相談をいただきました。
■ 解雇の法的ハードル
日本の労働契約法第16条は、解雇権濫用法理を定めており、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の解雇は無効となります。特に「能力不足」を理由とする普通解雇は、裁判例において極めて高いハードルが設けられています。
たとえば、東京地裁の最近の判例では、以下の要件をすべて満たすことが事実上要求されました。
1. 採用時に求められた能力水準が雇用契約・募集要項で具体的に明示されていたこと 2. 期待した能力に達しない事実が客観的記録(評価面談記録・KPI達成状況等)で立証できること 3. 改善の機会が複数回与えられたこと(業務改善計画 / PIPの実施) 4. 配置転換等の解雇回避努力が尽くされたこと 5. 上記の経緯について本人への説明・同意確認が記録化されていること
■ 当事務所のサポート内容
A社様には、即時解雇ではなく以下のステップを踏むことをご提案しました。
第1段階:採用時の期待値と現状のギャップを書面で本人に通知し、面談記録を作成。 第2段階:3ヶ月の業務改善計画(PIP)を策定し、週次の進捗確認面談を実施。 第3段階:PIP終了時点で改善が見られない場合、配置転換を打診。 第4段階:配置転換後も改善が見られない場合、退職勧奨を実施。
結果として、A社様は第3段階で本人と合意のうえ円満退職となり、訴訟リスクを完全に回避することができました。
■ 予防法務の観点から
中小企業の経営者の皆様にお伝えしたいのは、「解雇したい」と思った時点では、すでに法的に手遅れであることが多いという点です。採用時の雇用契約書の整備、就業規則における懲戒・解雇事由の明確化、評価制度の整備こそが、結果的に労務トラブルの予防につながります。
顧問契約にて、これらの予防法務体制の構築を支援しております。お気軽にご相談ください。